2008年03月22日
(89) メタル・ウォーズ
最近ちょっと面白い本を読んだので紹介します。
谷口正次さん著の「メタル・ウォーズ」です。
2月28日に初版が出て、さっそく翌月第二刷が出ているので、市場でも注目の本ではと想像します。
感想をいくつか、、、
1、文章は下手ですが、内容のある本です。
著者は鉱山工学科を出て、長年資源分野の実業に携わってきただけあり、
とても示唆に富む内容です。
2、日本の商社の機能に関して誤解あり。
商社を単に貿易で物を右から左に流すものと理解しているようで、
実は、国際的なBusiness Enablerとしての役割を見落としているようです。
これは、優れた技術や製品があれば、自動的に国境をまたぐ、
生産・販売・ロジスティクスの仕組みが出来上がると単純化した発想があるのでは。
実は多くの人と知恵を投入してリスクを張る企業家精神が必要な役割があります。
3、中国の資源爆食がとても迫力を持って表現されてます。
また、必ずしも資金力にものを言わせてアフリカでの資源確保が順調には行ってない部分も興味あります。
それにしても、環境や人権を配慮せず直線的に突き進む中国、恐るべし。
4、CVRDの抱える問題。
鉄鉱石メジャーから非鉄を含む総合資源企業に生まれ変わりつつある同社が、
2006年10月に買収したカナダ企業インコが操業するニューカレドニアやインドネシアでの、
環境や人権で問題を抱えるニッケル鉱山について記述があります。
事実とすれば、今後世界で多様な事業を拡大する同社にとって重要な経営課題だと思います。
5、アングロサクソン諸国のダブル・スタンダード。
また、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国といったアングロサクソン諸国が、
2007年9月13日に国連総会で圧倒的多数で可決された「先住民族の権利宣言」に反対投票していた、
という事実を含め、言っている事とやっていることの矛盾に関する指摘は重要だと思います。
6、未来への挑戦。
最後の章で、未来への提言があり、これで本書の価値がぐんと上昇していると思います。
特に3点、自分の子供達の世代の為にも、何か役に立ちたいと思います。
第一に、「都市鉱山」の発想。日本のDOWAホールディングスの先進的な取組みが紹介されてますが、
実は携帯電話や家電などの廃棄物から取り出せる非鉄金属・貴金属資源は、
鉱山開発のような環境破壊や人権侵害を防ぎつつ、量的にもインパクトのある有効な資源対策になるという点。
第二に、「海底資源開発」の可能性。特に日本周辺海域は大きな潜在力を有しており、海底環境対策に配慮すれば、
人権問題を回避しつつ、効果的な資源対策になりうること。
第三に、「バイオ・マイニング」の可能性。地球上に存在するある微生物は、岩盤の爆破や大量の採掘廃棄物汚染を出すことなく、効果的に鉱床の中の金属を湧出させ、回収を可能とする能力を持つ「Magic Bug」の役割を有すること。
以上は大きな実現可能性と社会へのインパクトを有しており、これをきちんと指摘した本書の価値は高いと思う。
CVRDを含め、大きな利益を計上する資源メジャーがこのような解決策への研究開発投資を強化することを願うと同時に、
自分も何らかの役に立てないか、良く考えたい。




